ピンポイントで俄雨

曇天の下、僕らは屋上で昼食をとっていた。
屋上は本来なら立ち入り禁止だったけれど、細かいことは気にしない。
校内で二人きりになれる時間と場所は貴重なものだ。
承太郎はホリィさん手作りのお弁当を、僕も母の手作り弁当を食べていた。
やっぱり親が作ってくれたものは美味しいし、ありがたいものだ。

午後の授業はこのままサボっちまうか。

そう言って食べ終わったお弁当を片付け、承太郎が壁に背を預けて腕を組み、目を閉じる。
目を閉じるってことは、覚悟はあるんだろうね。
悪くない案だね、と僕は言い、寝入る格好になった承太郎にちらりと目を向けた。

空はまるで夜のように暗くなっている。今にも雨が降ってきそうだった。
絶対に降るんじゃないぞ、僕は心の中で天に祈りながらお弁当を片付けた。
片付けたそれは脇に退けて、そろりと彼に近づきその顔を見つめる。
彫りの深い、相変わらず綺麗な顔をしている。なんというか、一つ一つのパーツが整っている気がする。
これは盲目ってやつになってるのかな。惚れてるんだから仕方がないけどね。
承太郎は本当にそのまま寝てしまう気なのか、身動ぎ一つせず目を閉じている。
二人きりの時にそういう行動に出たら、文句は言えないよ。承太郎。
僕は心中でだけそう呟いた。
そして承太郎の唇に吸い寄せられるように、そっと口付けを落とそうと、した。

その瞬間、承太郎の頬に小さな雫が落ちてくる。
次いで屋上の床に、僕の頭に、やがて大粒の雨が降り注いでくる。
なんてタイミングで降ってくるんだ。
僕は思わず天を仰いだ。
承太郎は目を開けて、降ってきやがった、と呟いている。
その声に被さるように空が光って、しばらく後で重低音が轟いた。
雨が床を叩く音が次第に大きくなる。

おあずけだな。

小さく笑って、屋上から校舎へ走り戻る承太郎に僕は目を丸くする。
気付いてたのか。というより、むしろ確信犯だったのかい?
雨が一層激しくなってきて、僕は慌てて校舎に戻ってしまった承太郎を追いかけた。
あおずけだって、冗談じゃない。
ピンポイントで降ってきた俄雨が、この上なく憎たらしかった。