寝込みは襲うな。
学校には行かせろ。

承太郎が「遊び」においてDIOに要求したのは、主にこの2点だった。
二つ返事で引き受けた元帝王は、実際その通りに行動した。
それ以外の時は、よくちょっかいを出してきたが。
仮にDIOが血を吸おうとしても、本当に危ない時には「時を止める」という選択肢も存在している。
そのためDIOに対して、以前ほどの脅威を感じていないのは事実だった。

「遊び」が始まってから、1週間が経っていた。
勉強中、食事中、風呂上りなどなどに襲われはするが、とりあえずまだ吸血はされていない。
自宅で気が休まらないというのも考えものだ。
母親のホリィはのほほんと「仲が良いわね」と笑っていて、少し恨めしい。

学校から家への帰途に着く最中、承太郎は軽い頭痛を覚えていた。
家に帰ったら、また色々とされるのかと思うと少々気が重い。

――やれやれだぜ。

吸血しなくても大丈夫なように出来ないものか。
そんなことを考えつつ、夕焼け空を眺める。
もうじき彼の時間がやってくる。


母に帰宅した旨を告げ、自分の部屋に行く。
部屋に入ると、承太郎の布団にDIOが寝転がって読書をしている最中だった。

「…人の布団で勝手に寝るんじゃねぇ。」
「気にするな。お前が使う時にはどいてやろう。」

あまり使いたくない。
が、面倒なのでそのことは言わずにおいた。
机に置いた鞄から教科書を取り出しながら、ちらりとDIOを見遣る。
普段ならば、承太郎が学校から帰ってきた時点で口か手が出てくるのだが。
今日はやけに静かだった。
いつもあることが無いと、調子が狂うものである。
例に漏れず承太郎もそうで、思わずDIOに聞いてしまった。

「…諦めたのか?」
「うん? …ああ、今は動く気にもならんだけだ。」

思わずDIOの姿を見た。
平然と本を読んでいるが、動く気にならないということは、態度に反して実はかなり疲弊しているのだろうか。
思わず布団の脇に行って、DIOに尋ねた。

「…大丈夫なのか?」
「…フッフッフ…。良かったな、承太郎。
このまま私が死ねば、お前が我が身を守りきった証だぞ。
よもやこのDIOに血を吸わせんとはな。」
「吸血しないくらいで、死ぬのか? 飯も食ってるのに?」
「お前はワインを飲むだけで生きていけるか?
言っただろう、承太郎…。料理は嗜好品に過ぎんのだ。」

SPW財団で蘇ってから空条家に来るまでの期間も含めると、かれこれ10日間は絶食状態らしい。
曰く栄養失調、餓死寸前状態のようだ。
しかしDIOは、承太郎の布団に寝転び何事もないように相変わらず本を読んでいる。
元々肌は白かったが、どこか青白い気がするのは目の錯覚だろうか。

「…………。」

DIOの言葉を信じるとすれば、このまま吸血しなければ彼は死んでしまうのだろう。
慈悲の気持ちもないし、憎くない訳でもないが、それでも共にいる時間が続くとそれだけ「慣れ」が生じてくる。
居たものが居なくなるというのは、寂寞とした感情を湧き立たせるものだ。
それに、これでDIOがいなくなれば原因は承太郎が作ったことになる。
間接的とはいえ、殺すのは承太郎なのだ。
後味が、よくない。

布団の脇に座り、俯いて微動だにしない承太郎をDIOがちらと見遣る。
承太郎のその様子に本から手を離し、そっとその首筋に手を当てる。
その指先が首筋に触れた瞬間、びくりと肩を震わせて承太郎が体を引く。
そして首筋に触れるDIOの手を見て、顔を顰めた。
どうやら本当に心ここにあらずの状態だったらしい。

「隙だらけだったぞ、承太郎。」
「……やれやれだぜ。」
「逃げないのか?」

DIOが体を起こして承太郎の顔を覗き込み、深緑の眼を見つめる。
そこにはこれと言った感情は浮かんでいない。
その代わり何か思うところがあるのか、DIOの眼を見ようともしない。

DIOはそれを、了承の合図と取った。
承太郎は抵抗しない。

そのまま、DIOは承太郎を布団に引き摺り倒し、首筋に爪を突き立て血を吸った。


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そして吸いすぎるDIO様。きっとあとでぶん殴られるでしょう。
実はまだまだ平気だったDIO様。
動く気にならない→本が面白いので今は動くのが面倒くさい
承太郎がちょいと勘違いしてくれたので、DIO様としては棚ぼた状態。