それは、とある月の綺麗な夜の出来事だ。

「承太郎、出かけないか。」
「はぁ? こんな時間になんでだよ、ふざけんな馬鹿野郎。」
「…ちと付き合ってくれても良いではないか。」
「嫌だ。面倒くさい。一人で行け。」

突然のDIOの誘いに、しかし承太郎は本から顔も上げずに拒否の言葉を言い放った。
容赦ない承太郎に、DIOの眉が情けなく垂れ下がる。
だが諦めきれないのか、DIOはなぜか正座をして承太郎ににじり寄り、喚いた。
今までも何度も玉砕しているのだ、今日くらいは押し切ってしまいたい。

「少しくらいこのDIOに付き合えッ、承太郎!」
「…なんでだよ。」
「…む?」
「なんで俺がテメーなんかに付き合わなきゃなんねぇんだ?」

やかましいDIOに辟易したのか、ようやく本から顔を上げて承太郎がDIOに視線を寄越す。
DIOは内心でそのことを喜んだが、その視線は凄まじく剣呑なものだ。うっかり妙なことを口走ると、恐らく再起不能にされるだろう。
その視線にやや気圧されながら、元帝王は声を大にして叫んだ。

「それはだな、何度も言うが…この私がお前を愛しているからだッ。」
「…お前、まだそんな虚言吐いてんのか。」

承太郎がほんの少し目を見開き、驚いたような顔をする。実際、承太郎は驚いていた。
今までも何度もDIOは「愛してる」だとか何だとか言ってきていたが、その度に承太郎はその言葉を粉砕してきたのだ。
それでもまだそんなことを言ってくる辺り、馬鹿なのか手遅れなのか。
DIOは承太郎のその反応が気に入らないのか、更に熱く自らの思いの丈を言い募った。

「いいや、これは事実だ。嘘などではないぞッ、承太郎!」
「どうだか。」
「何を言う、このDIOのお前に対する愛は海より深いのだ!」

私が沈んでいたよりも、もっとだ!!
ばんばんと机を叩きながら、DIOが必死に熱弁をふるう。
承太郎はそんな彼を頬杖をつきながら冷ややかな目で見つめていたが、やがてそっと溜息をつく。呆れてではない、もっと別の感情からだ。
――ああもう、この吸血鬼はさっきから何を言うのか。
承太郎はぷいっとそっぽを向く。

「お前、さっきからうるさいぞ。」
「…つれないな、承太郎…。」

どんなに押しても素っ気無い態度のままの承太郎に、ついに目の前の男が肩を落としてしょんぼりとする。
でかい図体でそんな顔をされても、可愛くも何とも無い。
DIOとしては、暖簾に腕押しとはよく言ったものだ、と内心で涙を流すことしか出来ない。せっかくのいい夜なので、今日こそは二人で出かけたかったのだが。
そんなDIOの心を知ってかしらずか、承太郎は帽子を深く被り直して、小声で素っ気無く言った。

「……そんなの、いちいち言うもんじゃねぇんだよ。」

承太郎のその一言を耳聡く聞き付け、同時にほんの少し赤い耳を見て現金な吸血鬼は表情を変える。
――ああもうやっぱり可愛い奴め。
DIOの胸中に喜びが満ち溢れた。

「愛しているぞ、承太郎!!」
「…うっせーぞ!馬鹿野郎!!」

背中からがばりと抱きついたDIOの顎が、スタープラチナに殴り抜かれた。


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ヘタレDIO様xドS承太郎のつもりでしたが…いろいろと違うものに…。