夕食が終わり、DIOと承太郎はのんびりとくつろいでいる最中だった。
DIOが学校の事を聞いてくるので適当にそれを受け流しつつ、承太郎は雑誌に目を落とす。これといって大したことが書かれていないので、適当に斜め読みをする。はぁ、と溜息をつくと、上品な香りが匂ってくるのに気付いて顔を上げた。
香りの先ではにこにこと笑う母が、お盆を手に二人の元にやってくる。

「承太郎、DIOさん。食後の一杯をどうぞ!」



すごく美味しい紅茶だったから、貰ってきちゃった。
ホリィは嬉しそうに言いながら、二人の前に湯気の立つ紅茶とケーキを置く。
普通ならばこういったものはアフタヌーンティーと称して夕食前に摂るものだろうが、生憎と空条家には昼間に活動できない者が若干一名存在している。
またその時間帯には承太郎も学校に行っていることが多く、そういったものは夕食後に出されることが多かった。
ハイティーとしてはこれでは足らんしな。とはDIOの談である。
二人は目の前に置かれた、いかにも甘そうなラズベリーのムースとイチゴショートケーキを眺めた。

「承太郎、お前甘いものは食べられるのか。」
「まぁ、ケーキ一つくらいならなんとかな。お前はどうなんだよ?」
「まぁ私もそんなものだな。」

あまり甘くないのならば別に大丈夫だろうが。
DIOはそう言いながら、目の前のイチゴショートを手に取る。まじまじと見やって、甘そうだな…と呟いた。
承太郎もムースにフォークを突き刺しながら、甘そうだな…と思った。
二人は適度に紅茶を挟みつつ、ちびちびとケーキを食べ進める。甘すぎはしないが、それでも甘味が得意ではないので一気には食べられない。あまり大きくないのが救いだろうか。紅茶の方は林檎のフレーバーティらしく、香りは甘いが味はすっきりとしており、甘いケーキとよく合った。

食べ終わったらお皿をキッチンに持って来てね。
キッチンで夕食の片付けをしているのだろう、ホリィの声が届く。承太郎は顔を上げて、分かったと返事をする。そして視線を戻すと、ムースに載っていたラズベリーがないことに気付いた。
その動きに気付かなかった自分に僅かに歯噛みする。よもやそんな幼稚なことをしてくるとは思ってもいなかったのだ。まるで時でも止めたかのように鮮やかなDIOの手口である。

「……お前だな。」
「何のことだ。」

DIOがしれっとした顔で言う。挙句の果てに、スタープラチナではないか、とまで言う始末である。
別にラズベリーを楽しみにしていたわけではなかったが、DIOに取られたという事実が非常に腹立たしい。これが母ならば笑って許すところだが、DIOではまったく許す気にならない。
彼のケーキの上にもまだ苺が残っていたので、スタープラチナで時でも止めて取ってやろうかとも思ったのだが、さすがに大人気ないのでやめておく。しかし、仕返しをやめる気は承太郎にはさらさらない。

「残してるんなら食ってやるぜ。」
「なに?」

DIOの視線が承太郎に向いた瞬間、スタープラチナの正確無比で素早い動きが発揮される。瞬く間に、DIOのケーキの上からは苺が消え去った。

「承太郎、なにをするッ! こともあろうにスタンドまで使ったな!?」
「先にやったのはテメーだろうがッ!」
「うるさいぞ、貴様この私の目の前で何ということを!」

二人は立ち上がり、ぎゃあぎゃあと言い合いながら睨み合う。
その声はもちろん、キッチンで片付けをするホリィの耳にも届いていた。しかしその喧嘩を聞きながら、ホリィは心配するでもなくにっこりと微笑む。
――あらあら、相変わらず仲良しさんね。

空条家は今日も平和だった。


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ケーキを食べるこの二人ってものすごく可愛くないですか。
そしてどの道大人気ない承太郎さん。
お互い自分のものを取られるのは気に入らないんです。