この映像はあいつも見るのか?
会ったら伝えてくれ

よう 相棒
まだ生きてるか?
ありがとう 戦友
またな


淡い花が咲き乱れる、2006年3月頃のデラルーシ

相棒で戦友、そして敵。
彼…サイファーとの関係を簡潔にすれば、こんなところだろう。
僅か2ヶ月しか共に居なかったが、それでも彼のパイロットとしての強さには舌を巻いたものだ。
ひたすらに強い、鬼神とまで呼ばれた彼の飛び方は、今でも目に焼きついている。
そして昨日のことのように思い出せる、彼とのドッグファイト。
あれほど高揚した空戦は、あれが最初で最後だった。

エースとしての彼を尊敬しもしたし、敵としても戦いがいがあったと言って良いだろう。
だがきっと、こんなにも記憶にはっきりと刻み込まれているのは、自分が彼に思うところがあったからなのだろうと思う。
自信家で皮肉屋ではあったが、快活で、共にいることが心地良いとさえ感じた。
よく寝てはいたが。ブリーフィング中でも問答無用で寝る彼には手を焼いたものだ。

ピクシーは苦笑しながら、銃を片手に遠目に見える民家まで歩いて行く。
ユージア大陸にある小国、デラルーシの国境沿いにある小さな村が、今の彼の居場所だ。
相棒…サイファーに撃墜されてベイルアウトし、そのままふらつきながらも辿り着いたのがここだった。
核爆発によって疲弊しながらも力強く生きる人々に強い感銘を受けた。
だからここで戦っている。パイロットではなく、兵士として。

力強く大地を踏みしめ歩いていたピクシーの頭上で、轟音が響く。

――懐かしい音だ。

ピクシーは小さく微笑み、空を見上げる。
大空を我が物顔で悠々と、戦闘機たちが飛翔していった。
その機影に、ピクシーの眼が見開かれる。
6機で編隊飛行を行っていたにも拘らず、先頭を行くイーグルしか目に入らなかった。
紛れもなく、かつて自分と…そして彼が駆っていたものと同型の機体だった。
群青のカラーリングが目に焼きつく。

――サイファー?

その姿にそう思ったが、すぐにありえないとその考えを打ち消す。
彼が偶然でもここに来るとは思えない。
その上、6機で編隊飛行だ。
サイファーは大人しく編隊を組むような性格ではないし、6機も面倒を見るほどマメではない。
2機編隊でさえ僚機と合わせる気は全くないわ、命令はほぼ常に任意という放任っぷりだった。
たまに対地を命じられたかと思うと、そこはB7Rだったりもした。
とんでもないヤツだった、と思い出だして小さく笑う。
そうしながらも、内心では必死で"今のは彼ではない"と自分に言い聞かせる。
一度乱された心は簡単には落ち着いてくれなかった。
この10年間でも何度も見たはずなのに未だ見慣れず、イーグルだけは視界に入る度に心が跳ね上がった。

掻き乱された彼への想いを胸の奥底に秘めて、ピクシーは銃を片手にただ歩く。
本来ならば民家まで戻らなければならないのだが、耳慣れたあの轟音を耳にし、あの機影を見てしまった今となってはそんな気も起こらない。
今すぐでなくとも、戻れば良いのだ。
だがこのまま何処へ行こうかと、思う。
その時ふと、ナンバリングやエンブレムを見損ねたことに気付く。
032が刻まれていれば、きっと彼なのに。
ピクシーは女々しい自分の感情に苦笑し、戦闘機たちが飛んで行った方向をただ見つめる。

そういえば、自分が墜ちてから、彼には何があったのだろう。
彼はあの後から消息不明だと、インタビューに来たOBCの記者が言っていた。
ヴァレー空軍基地には戻らなかったとも。
サイファーは一体何を思い、何を目指し、何処へ行ったのだろうか。

彼の機体が飛んではいないかと、空を見上げるくせがここ何年も直らない。
今飛んで行った編隊のせいで、余計に空から目が離れなかった。

10年経った今でもまだ、この空に、見えない君を探してる。
あのイーグルが君だったなら、